空気が乾燥する時期になってきました。

例年通り、皮膚の乾燥からかゆみや湿疹で受診されるお子さんも増えてきています。そこで、乾燥する季節の子供のお肌のトラブルとその対処法、主に保湿剤についてお伝えしたいと思います。

保湿剤のイラスト

乾燥する秋から冬にかけて、皮膚の水分も減少しがちとなり、カサカサする、かゆくなることが増えてきます。特に皮膚の弱いお子さんにとって、お肌のケアは大事です。

なぜかというと、カサカサするお肌は皮膚の細胞がばらばらになりがちで、細胞同士のすきまが広くなってきます。この隙間にハウスダストなどのアレルゲンが入り込んできます。さらに、皮膚には免疫細胞がパトロールをしており、皮膚から侵入したアレルゲンはこの免疫細胞から体にアレルギー物質として認識されるようになり、アレルギー症状が出るようになってしまいます。つまり、皮膚のトラブルがアレルギーの原因になりうるのです。

肌荒れを気にしている女の子のイラスト

そこで、スキンケアの基本である保湿について説明します。

☆まずは、保湿剤についてです。

保湿剤と単純に言っても、種類も様々です。従来使われてきたワセリンや尿素製剤のほか、近年はヘパリン類似物質がその効果などから非常に広く使われるようになってきています。さらに、クリーム製剤やローション、泡状の保湿剤など剤型もかなり豊富になってきています。そのまた更に、保湿剤を製造販売する製薬会社も増えてきており、ジェネリック製剤も増加、同じ成分でもその使用感はかなり差が見られることも事実です。

1.ワセリン製剤:しっかりカバー!

以前からよく使用されていて、ほかの薬を混ぜる基剤としても使用されています。ワセリンは基本的には脂成分であり、皮膚に塗ることで脂の被膜を作りお肌からの水分の蒸発を防ぐことで保湿しています。

2.ヘパリン類似物質:お風呂あがりすぐに塗ろう!

現在、最も広く使われている保湿剤と言ってもいいでしょう。ヘパリン類似物質は水とよくなじみ、水分子とひっつきやすい性質を持っています。そして、皮膚の中に浸透していくことにより皮膚の中になる水分の保持に役立つことで保湿してくれています。ですから、乾燥している部分に塗るのが効果的なのですが、より効果を得るにはお風呂上りなど、皮膚に水分が多く含まれている間にたくさん塗ってあげることでより効果を期待することができます。

3.尿素製剤:保湿と肌のきめを整える!

最近はあまり頻用されることはなくなりましたが、保湿の作用のほか、余分な角質を除去し肌を整えるなどの効果もあり保湿剤としてだけでなく美容成分として使用されていることもあります。

これらの保湿剤は、基本的には刺激性も少なく安全に使用できますが、刺激に弱く、塗った部分が赤くなったりする人もいますので、そのような症状が出た場合にはすぐに使用を中止し、早めの受診をお勧めします。

最も使われている保湿剤であるヘパリン類似物質は、種類が豊富なので選択に迷うこともあると思います。

保湿剤で悩む女性のイラスト

重要なのは、どのような基剤が使われているかを確認することです。泡状製剤は、水様性の物質を基剤としているサラサラした製剤もあれば、油分も追加した基剤に水様性成分を混ぜて、よりしっとり感の強くなっているものもあります。それぞれ使用感が異なり、効果も違ってきます。つまり、保湿の主成分も重要ですが、その成分がどのようなものに混じっているかも重要で、お肌の状態や空気の乾燥状態、季節などによってローションや泡製剤とクリーム製剤を使い分ける、あるいは同じ泡製剤でも油分の入っているもの、入っていないものなど、細かな使い分けも必要になってくることがあります。このような使用感は人によっても異なり、いま、どのような保湿剤が今のお肌の状態にはあっているのかなども人それぞれですので、困ったら遠慮なく受診していただくとよいと思います。

お肌の乾燥だけでと受診をためらう必要は全くありません。特に子供にとって肌の状態をよい状態にしておくことは非常に重要です!

主成分はもちろん重要ですが、外用薬はその成分だけをぬっているのではありません。基剤も含めてすべてがお薬ですのでその点を注意して外用薬を選ぶ必要があるでしょう。

さらに、乾燥が重度になるとかゆみを引き起こしてくることも見られます。特に、冬では入浴時にかゆみがひどくなることもあります。肌がかゆくなると、子供は肌を掻いてかゆみを和らげようとしますが、この皮膚を掻いてしまうことは、お肌にとってはよくありません。肌は、掻けば掻くほどかゆくなり、肌はボロボロになってきます。そしてさらにかゆみがひどくなり、悪循環に陥ってしまいます。そして、このような状態の多くは、肌を触るとざらざらしています。このような時には、時にはステロイド外用薬やかゆみ止めの飲み薬を使いながら、症状を抑えていく治療をした方がよいこともあります。ただし、かゆみ止めの飲み薬(抗ヒスタミン薬)は、できる限り子供には飲ませないようになってきています。理由は眠くなること、またけいれんを起こしてしまう可能性が指摘されているからです。基本的にはお肌のかゆみは、適切な塗り薬でしっかりコントロールできることがほとんどですので、治療のキホンは外用薬になります

お薬の塗り方です。

手に薬を塗っている女性のイラスト

時折、お肌の薬を処方されて、自宅で塗っているけれどなかなか良くならないと受診される方がおられます。よく聞いてみると、お薬が少ないので、もったいないから少しずつ塗っているという方も少なくありません。

しかし、皮膚のかゆみや湿疹にも病気の勢い、強さがあります。皮膚の乾燥や湿疹・かゆみは、よく火事に例えられますが、大火事が起きているときに少ない水で消し止めようとしてもなかなか消えないのと同じように、皮膚の状態にあった薬を十分塗らないと効果が半減してしまったり、効果がないように見えてしまうこともあります。

適切な薬を処方されていても、正しい塗り方をしていないと、皮膚の状態は改善しないのです。特に保湿剤は、少ない量で少しずつ塗っていてはなかなか効果が実感できにくい傾向があります。

保湿剤はできればお風呂上りなど、お肌がしっとりしているときに(お肌の水分量が多い時に)、たっぷりと塗るようにするとよいでしょう。中には十分量を塗っていてもまだかさつきが残るお子さんもいることも事実です。このような場合には、保湿剤などを組み合わせて塗ることもあります。

当院ではなるべく、お薬は多めに処方し、たっぷりと塗ってもらうこと、さらに、できうる限り塗り方も説明するようにしています。もし説明がわからなければ、塗り方についてもどんどん質問してください。

お肌の状態が良い男性のイラスト
PAGE TOP