高尿酸血症(痛風)について
近年、痛風の患者数は100万人を超えるといわれ、さらに増加傾向にあります。
当院にも痛風の患者さんが受診されますが、痛風発作で発覚するケースも少なくありません。
痛風は、「風が吹きつけるだけで激痛が走る」ことから痛風と名付けられたという由来通り、その痛みは想像を絶するものです。
実は、痛風発作で受診する患者さんの中には、検診などで尿酸値が高いと指摘されている方が少なくありません。
この記事では、痛風について解説させていただきますので痛風について理解を深め、予防に役立てていただければ幸いです。
■高尿酸血症(痛風)とは
体内でのエネルギー代謝、細胞の新陳代謝によってプリン体が生じます。プリン体は肝臓で代謝され、尿酸となって体外へ排泄されます。
しかし、尿酸が過剰になると排泄が滞り、血液中の尿酸が増え、高尿酸血症となります。
『尿酸値7(mg/dl)』が治療開始の目安となりますが、検診等で尿酸値が高いと指摘されても、自覚症状がなく、放置してしまう方が少なくありません。
しかしながら、放置している間に悪化し、ある日、激しい痛みに襲われる痛風発作が起きるというケースが多く見られます。
定期的な検診で尿酸値を把握し、高尿酸血症を指摘された場合は、適切な治療や予防を行うことが重要です。
■痛風発作の特徴
痛風発作の痛みは関節に起きるという特徴があり、特に足の親指の付け根に発症します。
稀に足首・膝・手首が腫れることもあります。
痛風発作は24時間以内にピークに達し、通常10日〜2週間で症状が回復していきます。
しかし、尿酸値が高いままの状態であれば、痛風発作を繰り返してしまうため、痛風発作後には治療を行うことが重要です。
■高尿尿酸血症(痛風)の治療
①痛風発作の治療
痛風発作を発症している時は、痛みが非常に強いため、痛みを抑える鎮痛薬を使用します。痛みが治まらない場合や鎮痛薬を使用できない場合には、免疫を抑えるステロイド剤を使用することもあります。実は、痛みが強いときに尿酸を下げようと頑張ってしまうのは、逆効果となり、症状を悪化させてしまう可能性があるため、痛みが落ち着いた後に尿酸値を下げるための治療を検討します。
②高尿酸血症の治療痛風発作が落ち着いた後には、尿酸値を下げる治療を開始し、痛風発作を予防します。高尿酸治療症の治療薬は下記に示すような種類があり、症状にあった治療薬を選択します。
③生活習慣の改善
・肥満防止
肥満の状態が続くと体内でプリン体の産生が促され、尿酸の排泄低下が起き、尿酸値が高くなります。適正体重を保つことが大切です。
・アルコールを控える
アルコ ールは尿酸の産生量を増やし、 排泄量を減らします。 ビールはプリン体含量も多く、飲み過ぎは禁物です。
・十分な水分摂取
水分を十分に摂取し、尿量を増やすと、尿とともに尿酸が排出され、尿酸値が下がります。汗をかく季節には、尿量が減量し尿酸が溜まりやすくなります。十分な水分補給が大切です。
・適度な運動
運動は肥満防止のためにも大切です。
・プリン体の多い食べ物を控える
プリン体の70-80%は体内で作られ、20%前後は食事から摂取されます。食事から摂取するプリン体を抑えることが尿酸を減らすことになります。
・ストレス解消
精神的ストレスは、様々な不調を招きます。ストレスによって尿酸値が高くなる傾向にあると言われますので、趣味やスポーツなどでリフレッシュし、ストレスを解消することも重要です。
■高尿酸血症(痛風)の合併症
高尿酸血症を放置すると尿酸の結晶が腎臓や尿管にも沈着し腎臓結石や尿管結石、腎臓障害(痛風腎)を引き起こし、重篤な状態となるケースもあります。
また、高尿酸血症の人は、高カロリー、高脂質な食事を好む傾向にあり、肥満、脂質異常症、高血圧、脳血管障害、心血管障害、慢性腎臓病などを併発するリスクが高くなります。
検診等で尿酸値が高いと指摘された方は、痛風発作や合併症の発症を防ぐためにも放置せず、医療機関を受診し、医師に相談することをお勧めします。