肥満症について
2019年に新型コロナウイルスの出現以来、私たちの暮らしは大きく変わりました。
感染拡大を防ぐために人との接触を減らすという対策がとられ、多くの会社がリモートワークを推進し、人々は外出を控えるという生活が強いられました。
その結果、これまでの生活に比べ、運動量が激減し、体重の増加に悩む人も少なくありません。
体重増加が進めば肥満となるリスクが高く、様々な健康障害を起こす可能性があります。
今後もコロナウイルスとの共存は続くと予想されますが、実は肥満はコロナウイルスに感染した場合、重症化の大きなリスクとなります。
自己管理をしっかりと行い、肥満を防ぐことがコロナ禍の健康を保つ重要なカギとも言えます。
この記事では肥満について詳しく解説しますので参考にしていただければ幸いです。
■肥満とは
皆様は肥満と聞いてどんな状態を想像しますか?多くの方が肥満とは脂肪が増えた状態を想像するでしょう。
一般に私たちが脂肪と言うのは、「白色脂肪細胞」という細胞です。私たちは食事から生きるために必要なエネルギーと栄養素を得ていますが、全てがすぐに利用されるわけではなく、食事が取れないときなどに利用するため、体の中にエネルギーを蓄えています。その役割を担うのが白色脂肪細胞です。食事から摂取した過剰な脂質や糖は合成され中性脂肪となり白色脂肪細胞が取り込み、エネルギーとして蓄えていきます。白色脂肪細胞は、皮下脂肪と内臓脂肪として全身に広く分布し、過剰に蓄積されると『肥満』という状態になります。つまり、脂肪とは『中性脂肪を取り込んだ白色脂肪細胞』であり、検診などで『中性脂肪が高い』と指摘されたら、それは「脂肪が多く、肥満傾向にある」ということを意味します。
肥満は数値的に判定でき、BMI(Body Mass Index)=ボディマス指数を用います。BMIは体重と身長から算出される肥満度を表す体格指数であり、成人では国際的な指標として用います。
BMI = 体重kg ÷ (身長m)2
適正体重 = (身長m)2 ×22
適正体重は日本基準と世界基準位は少し異なり、日本肥満学会では、、BMIが22を適正体重(標準体重)、BMI 25以上を肥満症、35以上を 高度肥満症としています。
これに対し、 WHOの国際基準では30以上からが肥満であり,25 以上30未満は過体重と分類しています。
欧米や欧州と比較すると日本は肥満率が低い傾向にあり、BMIの基準値を見ても、肥満への予防意識が高いのかもしれませんね。
しかしながら、日本でも食の欧米化に伴い、肥満が増加する傾向にありますので注意が必要です。
■肥満症とメタボリックリンドローム
BMIが25以上の肥満症の中でも内臓脂肪が場合には、医学的な減量治療が必要です。
肥満は、糖尿病、高血圧、脂質異常などの生活習慣病だけでなく、様々な疾患を招くリスクが高くなります。
肥満症を放置すると、メタボリックシンドロームに移行してしまう人も少なくありません。
肥満症は、肥満を原因とする健康障害がある状態、または健康を害することがが予測される状態を指しますが、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)はさらに深刻な状態です。
メタボリックシンドロームは、ウエスト周囲径(おへその高さの腹囲)が男性85cm・女性90cm以上で、かつ高血圧、高血糖、脂質異常症のうち2つの症状がある状態です。メタボリックシンドロームは、動脈硬化を促進させ、心筋梗塞や脳梗塞を招く危険性が高まります。
■肥満症の検査
肥満症の治療には、現在の身体の状態を医学的に調べる必要があります。
①身体測定
身長、体重、体組成測定、ウエスト計測等を行い、BMI値などを参考に肥満症を判定します。
②血圧測定
血圧
収縮期:130mmhg未満 拡張期: 85mmhg未満が正常血圧の基準となります。
③採血検査
肥満症と判定された場合、採血検査を行い、下記の項目について調べます。
•HbA1c
HbA1c値はヘモグロビンにブドウ糖が結合した割合を示すものでHbA1cの値が高いということは、血糖値が高いことを示します。
•血糖値
肥満に伴い、インスリン抵抗性(インスリンの効きにくさ)が増大するため、インスリンが多く分泌されるようになり、その状態が続くとインスリン分泌が枯渇し、血糖値が上高くなります。
•中性脂肪
食べ過ぎや飲み過ぎ、運動不足などで血液中に中性脂肪が増加し、脂肪として蓄積します。
•HDLコレステロール
肥満等によって中性脂肪が高くなるとHDLコレステロールが低くなる傾向にあります。
•LDLコレステロール
悪玉コレステロールとも呼ばれ、肉の脂身やバター、ラード、生クリームなどに多く含まれる飽和脂肪酸を過剰摂取が原因で高値を示します。
•ALT
この数値が高いと脂肪肝、ウィルス性肝炎、アルコール性肝障害などの肝臓の異常が疑われます。肥満は脂肪肝の原因となります。
•γ-GT
アルコールによる肝障害の指標となり,肝臓や胆道の異常、肥満や脂肪肝でも高値を示します。
④尿検査
・尿糖
肥満は糖尿病の危険因子であり、血糖値が高い状態が続くと尿中に糖が漏れ出すようになります。
・尿蛋白肥満に伴い、腎機能が低下しやすく、腎臓に異常が生じると、尿中に蛋白が漏れ出すようになります。
■肥満症の治療・予防
上記に解説した血液検査に異常が認められ、肥満症からメタボリックシンドロームや他の疾患を招いている場合には、薬物療法などの適切な治療を行います。しかし、それぞれの検査値が基準値よりも高めでも改善の余地がある場合には、食事療法や運動療法を行います。
肥満には遺伝的要因もありますが、近年では生活環境や食習慣による影響が大きい傾向にあります。コロナ禍に体重が増加した人が多いように、身体活動量の低下も大きな要因となります。食事等による摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ると、過剰分なエネルギーが体脂肪として蓄積され、肥満につながります。肥満の治療・予防には、食事からのエネルギー摂取と運動などによる消費エネルギーのバランスを見直すことが重要です。
<食事療法のポイント>
①1日3回を基本に
栄養バランスの取れた食事を心がけましょう。
食事は抜かないようにし、規則正しくとりましょう。
②食べる順番も大切
野菜を先に食べることで血糖値の急激な上昇を抑えます。
③よく噛む
ゆっくりよく噛むことで脳の満腹中枢が刺激され満腹感を得られます。
④夕食は早めの時間に
夕食は軽めにし、早めの時間に摂りましょう、寝る前2~3時間はなるべく食べないことが理想です。
<運動療法のポイント>
①有酸素運動を基本に習慣化しましょう。
②ウォーキングなど無理のない運動から始め、強度を上げていくことが推奨されます。
③慣れてきたら週5日は行うとより効果が期待できます。
肥満を予防することで生活習慣病のリスクを大幅に下げることができます。体重増加や肥満が気になっているという方は、是非、当院の医師にご相談ください。